クラッシュ


映画の日に映画を観たのは「キングコング」以来。
って元旦ですけど。


「ミリオンダラーベイビー」の脚本家による初監督作、
といっても年齢は53歳なので新人という感じはしません。
群像劇とはつゆ知らず、ブレンダン・フレーザーとマット・デュロンが
出ているという、軽い理由で選んだのですが、結構いいですね、これ。


90年代以降なら、アルトマンの「ショート・カッツ」や
ポール・トーマス・アンダーソンマグノリア」、
ハリー・シンクレアの「TOPLESS」などは
おおむね成功例といってよいでしょうが、
概して、色々なシークエンスに散りばめられた登場人物が、
あるきっかけを通じてシンクロする、その瞬間のカタルシスの描き方に
重点が置かれていたと思うのですが、これはちょっと違います。
舞台は9.11以降のLA、多民族、多人種の登場人物が、
事件、事故、犯罪などを通じてすれ違っていく様を、
意外と分かりやすくTVドラマ演出風に積み重ねていきます。
偏見と差別の跋扈する世界は救いようがなく、
神を信じる者も宗教にすがる者も、そして神を信じない者も
同様に奈落に落ちていくような感覚を感じさせながら、
この映画では、その先を考えさせられます。
いまの日本をみても、このLAの状況にとても似た風潮を
感じる瞬間があります。
宗教や道徳が社会を規定?していた時代を過ぎてしまった世界の空っぽな感じ、
倫理という枠を取り払ってしまった世界を救う、
次の言葉を探しているかのような・・
ヒューマニズムという単語で片付けるには測れない試みが、
この映画では行われていたような気もしています。


監督・脚本ポール・ハギスイーストウッドの次回作、
硫黄島上陸戦のシナリオにも決まっているそうです。
この二人のタッグは見逃せなくなりましたね。


「クラッシュ」には自動車事故もたくさん登場したのですが
こんな日に雨の東京を走るのはちょっと怖かった。